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「とにかく、おれは出て行きます」
「瀬田・・・・・・」
瀬田の顔は今にも泣き出しそうに、秋川には見えた。
確かに笑っているというのに。
「だって先輩、気持ち悪いでしょう?今までと同じように、おれと暮らせるって言えるんですか?」
「・・・・・・」
何も言わない、言おうとしない秋川へと、瀬田は続ける。
「仕方がないですよ。先輩のせいじゃありません。もしもおれが先輩の立場だったなら、やっぱりそう思いますから。おれのこと、そんな目で見てたんだ。気持ち悪いって」
「思わないよ」
「え?」
小さい声だが、秋川はハッキリとそう言った。瀬田の顔を真っ直ぐと見つめて、今度は心持ち大きな声で言う。
「気持ち悪いなんて思わない。本当だ」
「先輩・・・」
「でも、今までと同じようには暮らせないと思う」
「そう、ですよね・・・それはおれもよく判ってます」
秋川は気を遣ってくれているのだ。と瀬田は思った。
思ってもいないことを、嘘までをも言って、自分を傷つけないようにしてくれている・・・
その、秋川の優しさだけで十分だ。ルームシェアをして本当によかった。と瀬田はあきらめた。
あきらめたはずだった。
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