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なんか、いい子だな。 人の意見をこんなに素直に聞けるなんてすごいと思う。もし俺が七翔君の立場だったら「あんたに何がわかるんだ」とか生意気な言葉で言い返すかもしれない。美琴なら「お兄ちゃんのバカ、大嫌い」と叫んでしばらくつんつんされるかな。 可愛くて七翔君の頭をくりくり撫でていると、彼がクスクス笑いだした。 「僕ね、実は頑固で1度こうと決めたら周りが見えなくなるタイプなんです。今もパティシエになりたいという気持ちで一杯でいつもならそれ以外は切り捨ててしまうのに、志季さんに出会って好きになって、そしたら欲張りになっちゃって。パティシエも志季さんもどっちも欲しくて。だから、この際親の希望も欲張っちゃいます。どれも大事で手放せないから」 「七翔君……」 「志季さんには僕を欲張りにした責任を取ってもらいますからね。だから、僕から離れないでください」 ……欲張りか。 そうだな、俺も欲張りになったのかもしれない。七翔君も仕事もどっちも大切で手放したくない。だから、俺も両方を手に入れる方法を模索してみよう。 「離れないよ。七翔君がくじけそうになったら俺が支えるから、七翔君も俺を支えて欲しい」 「僕が志季さんを?」 「そう。ダメかな?」 「そんなわけないです。すごく嬉しいです。僕に出来るなら全力であなたを支えます」 「全力か、悪くないな。じゃあ、よろしく」 「はい」 七翔君がふあーと大きなあくびをした。 「疲れたよな。もう寝よう」 「でも……」 「いいから。これからずっと一緒なんだから」 「ハハ、そうですね。では、寝ます。おやすみなさい」 すぐに寝息を立て始めた七翔君の柔らかい髪におやすみのキスを落とし、幸せな気分で目をつぶった。
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