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桃花さんと会ったのは入社して1年目の10月。関西から転勤してきた桃花さんは、自分も新しい土地で慣れないのに、教育係として厳しく俺を指導してくれた。俺が今あるのは、桃花さんのお陰だ。 5年先輩の彼女を初めは怖いとしか思わなかったが、一緒にいると女性らしい細やかな気配りが然り気無く出来る所や、実は笑い上戸な所、子供と犬が大好きで、辛いものが苦手で、いつも鞄にチョコを忍ばせている等色んな姿が見えてきて、尊敬すると共に可愛い人だと思えてきた。 そしていつしか尊敬が好きに変化していた。 けれど、この気持ちを伝えるつもりはなかった。なぜなら、彼女には関西に遠距離恋愛中の彼がいたから。 桃花さんと一緒にいたいけど一緒にいると辛いというどうしようもないジレンマに陥った事もあったが、今は見ているだけで満足だと思おうとしている。何となくだけど、10月の転勤で桃花さんとは離れる気がするから、僅かの間でも彼女といたいんだ。 向かいのデスクで美味しそうにガパオライスを食べる彼女をじっと見ていると、「やっぱり欲しかった?」と聞かれて首を横に振る。 欲しいのは弁当じゃなくて桃花さんだよって告げたらどう思うかな?
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