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カツカツという靴音と共にパシンと大きな音がした。 「薫、ちょっとは加減しろよ」 カウンターを出た風早さんが薫さんに近づき、手を取った。 「あんな奴殴ってお前の大事な手が傷ついたら困るだろ」 「だって……」 「分かってる。お前の代わりに後で俺が殴っとくから」 「そんな事言って殴らないんだろ」 「まあ……。でもきっちりと反省はさせる。出来なければ出禁にするから。だから、機嫌直して。薫には笑っていて欲しいから」 「御影(みかげ)……」 見つめ合う2人に、小桜さんが頭をさすりながら出禁は嫌だと抗議する。 あれ、これ大丈夫か? 慌てて佐藤さんを見ると、すごく眠そうに半分目を閉じていた。 さっきまであった小桜さんへの同情は跡形もなく消えているが、バーベキューの事だけははっきりさせないといけない。 「佐藤さん、起きて。あのさ、佐藤さんは小桜さんとバーベキューに行くんだよね?」 もしそうなら、今言った俺への告白は嘘になる。声を大きくした俺を不思議そうに眺めながら、佐藤さんは首を左右に振った。 「小桜さんとバーベキューに行くのは受付のりっちゃん。りっちゃんは小桜さんの事が良いって言ってて、私が星宮さんを誘えたら4人でバーベキューしようって言ってたんだけど、星宮さんダメって……。だから、私はお留守番です」 こ、ざ、く、らー。 確かに佐藤さんと2人で行くって言わなかったけど、あの流れだと誤解するだろ。 小桜さんを殴りにいこうとしたら七翔君に止められた。 「志季さん、僕に殴らせて。もう我慢できない」 すごい形相で小桜さんに向かう七翔君を、今度は風早さんが止めた。 「七翔、落ち着け。確かに腹は立つけど、こいつにも多少だか同情の余地はある。一応こいつのお陰で志季君が誘いから逃げられたんだし」 「…………」 「薫にも言ったけど、俺がしっかり絞めとくから2人とも許してやってくれ」 風早さんに頭を下げられたら引き下がるしかない。 「それよりタクシー呼ばなくて大丈夫か?佐藤さん、寝ちゃいそうだよ」
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