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「少し歩こうか?」
パティスリー薫を出た俺達は、クリスマスのイルミネーションが輝く駅前通りを歩き始めた。
「綺麗だな」
「はい」
「そう言えば、こんな風にゆっくりとイルミネーションを見たのは初めてかもしれない」
「志季さんも?でも彼女とかいたんですよね…」
「うん、いたよ。だけど、彼女達は学校が同じだったからか改めてデートをする事があまりなかったんだ。だから、七翔君が初めてだよ」
「嬉しい」と頬を赤らめる七翔君を抱き締めたいが、さすがに外では無理だ。
「なぁ、俺が今何考えてるか分かる?」
「今ですか?お腹空いたとか?」
「ブー。違うよ」
「じゃあ、寒いから早く店に入りたい?」
「寒いけど、違うな」
「えー、後は何だろう。疲れた……とか?」
俺今すごく物欲しそうな顔をしてると思うんだけど気づいてないのかな?まさかわざととぼけてるんじゃないよな。いや、ないない。七翔君は本気で気づいてないんだ。
俺ばっかり欲しがっているのが悔しくて、七翔君の耳に唇を寄せて囁いた。
「正解は、抱き締めたいだよ」
「へっ」
まさかそんな事を言われると思わなかったんだろう。七翔君が口をポカンと開けて俺を見た。
「キスもしたいし、それ以上もしたい。七翔君はどう?」
だめ押しのように付け加えると、七翔君の顔が真っ赤になった。
「し、志季さんっ」
「分かってる。ちゃんと我慢できるから、早く飯を済ませて帰ろう。な」
「………はい」
定食屋でいいかと聞くと、七翔君が激しく首を横に振った。
「牛丼テイクアウトして帰りましょう。僕が我慢できない」
「えっ」
あー、七翔君には一生敵わない気がする。
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