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「紅生姜多目でお願いします」
七翔君が注文すると、牛丼屋の店員が小袋に入った紅生姜を鷲掴みにして袋にどさりと入れた。
「こ、このくらいでいいですか?」
「そんなにいいんですか?」
「はい!ほ、他には?」
「大丈夫です、ありがとう」
七翔君がにっこりと微笑むと、店員は真っ赤になってうつむいた。
まさか………。嫌な考えが頭を過り、急いで七翔君を店員から引き離し店を出た。
「七翔君って、実はすごくモテるんじゃ……」
「へっ?」
頭に浮かんだ疑問がつい言葉に出てしまう。
「あ、いや、さっきの店員、七翔君に笑いかけられて顔を真っ赤にしてただろ。だから、ちょっと心配になって」
そうだ。何で今まで気がつかなかったんだろう。
七翔君がニコリと微笑むだけであの店員のようにコロっと恋に落ちてしまう男が沢山いるに違いない。
「七翔君、あんまり無防備に笑顔を振り撒かないで」
「えっ?」
「あー、それもダメ。上目遣いとかヤバイから」
気になり出すと、止まらなくなる。
七翔君が大学でモテるのか、さりげなく美琴に聞いてみるか。いや、それはさすがにまずいか。
「志季さん、どこに行くの?家に来るんじゃないの?」
腕を掴まれて周りを見回すと、曲がるはずの道を通りすぎていた。
「ごめん。考え事してた」
「さっきから変だよ。僕………何かした?」
不安そうな七翔君に申し訳なくなる。
「してないよ。ただ、俺がさっきの店員に焼きもちをやいただけ」
「………焼きもち?」
「そう。七翔君にあんなに可愛い笑顔を向けられたから」
俺、どんだけ心が狭いんだよ。恥ずかしすぎる……。
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