3

2/14

917人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ
MRという仕事はあまり会社にいない。それがこんなにありがたいなんて思わなかった。 桃花さんの事をなかなか忘れる事が出来なくて、綺麗に片付いた向かいの席を見るたびにため息をついてしまう。 「星宮君、来週新しい人が配属されるからよろしくね」 総務の安田さんに言われて、ハッとする。桃花さんの机に新しい人が来るのか。彼女がいなくなってからもう1月も経つし、そろそろ気持ちを入れ換えないといけないな。 「なんか中途半端な時期ですね」 「そうなの。本当は10月に来る予定だったんだけど、引き継ぎに手間取ったとかで」 「どんな人が来るんですか?」 「小桜(こざくら)さんていう男の人で年齢は35歳だったかな。独身で、長身のイケメンらしいわよ」 安田さんがちょっと嬉しそうだ。結婚してて子供がいる人でも、やっぱりイケメンは嬉しいらしい。 「歓迎会の幹事星宮君だから、来週の金曜日に店押さえといてね。それと、出席者の確認も早めにお願い」 「はい」 MRは転勤が多いので、飲み会ばかりが増える。だから、うちの会社では研究職を除いた全ての部署が合同で歓迎会や送別会を行うことにしているんだ。日頃デスクにいない人も多いので、飲み会で繋がりを作る感じかな。そんなわけで、飲み会の出席率は結構高い。 小桜(こざくら)さんか。桃の次に桜だなんて、まるで季節が移り変わるようだ。 よし、今夜はこの間見つけたバーに行こう。 明日は休みだからたらふく飲んで、桃花さんの事をきっぱりと諦めるんだ。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

917人が本棚に入れています
本棚に追加