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この人、なんで拗ねてるんだ?
苦手だと思っていた時は嫌みったらしく感じていた言葉と表情が、慣れると案外可愛く見えてくるから不思議だ。
「そうですけど何か?」
ちょっと意地悪してみたくなってわざと素っ気なく返すと、小桜さんがうっと詰まって目をキョロキョロさせた。
悪い人じゃないんだけどなぁ。
この人なんか色々損してる気がする。世間的に見れば、背も高く顔も整ってて、おまけに優しいからもっとモテるはずなのに。
「俺に何か?」
可哀想になってきてちょっぴり柔らかく尋ねると、小桜さんが照れたように頭をかいた。
「いや……クリスマスどうするのかなと思って」
「クリスマス?」
「ああ。彼と会えないって御影が言ってたから星宮君もそうなのかなと思って」
パティスリー薫は普段でも人気で行列ができる店だが、クリスマスシーズンはそんなの比じゃないくらいくらい殺人的に忙しいらしい。一年で一番の稼ぎ時だと七翔君は張り切っていたけど。
俺はそれを聞いてから行くのを控えている。七翔君には会いたいが、女性で満員の店に男一人で入っていく勇気はない。
「25日までは会えないと思います。そう言えば、22日に平岩クリニックのクリスマスパーティーに呼ばれてた」
危うく忘れる所だった。
「平岩クリニックってスタッフ全員が女性の?」
「はい」
平岩クリニックは医者も看護師も受付も薬剤師まで全て女性だけというのがうりになっている。本来ならMRも女性がいいのだろうが、紅一点だった桃花さんが居なくなってしまったから仕方がない。一応午前の診療時間後に訪問するようにしているが、たまに患者さんに会ってしまうこともあって結構気を使う。
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