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「注文は?」 いつもならジン・トニックだが……。 「温かい飲み物ってありますか?」 「それならホットワインはどうかな?温まるよ」 「じゃあそれでお願いします」 「はい」 風早さんはりんごを手に取ると小さくカットして、小鍋に白ワイン、りんご、砂糖、シナモンスティック、それから小さな茶色いものを数個入れ火にかけた。 「その茶色いのは何ですか?」 「あー、これはクローブって言う香辛料でカレーに入れたりするんだ。後はチャイの香り付けにもするかな」 「へえ……」 「そろそろだな」 風早さんは沸騰直前に火を消し、中のワインを茶漉しでこしながらガラスカップにそそいだ。その上に茶漉しの中のりんごを浮かべて俺の前に置いてくれる。 「どうぞ」 「ホットワインて赤ワインで作るのかと思ってました」 「イメージはそうだけど、どちらでもいいんだよ。今日はりんごを入れてみたけどみかんやレモンでも美味しく出来るし、風邪気味なら生姜もおすすめだよ」 少しだけ猫舌気味なので念入りにフーフーと冷ますと、恐々一口含む。 ワインとりんごの甘い香りと香辛料のスパイシーな香りが鼻に抜ける。ワインは辛口なのにほんのり甘いのは砂糖だけじゃなく、りんごの影響もあるのかもしれない。 「あ、美味しい」 「それは良かった。じゃあ、本日のメインね」 目の前に置かれた湯気のたつお皿を見ると美味しそうなホワイトシチューだった。添えられた小皿にはカリカリのガーリックトースト。それともう一皿は、骨付きモモ肉で作った艶々輝くクリスマスチキン。 「一応、気分だけでもね。冷めない内にどうぞ」 まさかこんなに美味しそうな料理を用意してもらえるなんて思ってなかった。 「七翔君にも食べさせてあげたいな」 今頃必死で働いているだろう七翔君が浮かび、思わず声に出してしまう。
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