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ちゃんと帰って来るようにと荷物を人質(人じゃないけど)に取られて送り出された。 コートのポケットに入った携帯と、紙袋を2つ持って寒さに震えながらケーキ屋に向かう。 裏口ってどこだ? 肝心な事を聞き忘れたが、まあ大丈夫だろう。案の定建物の後ろにすぐに小さなドアを見つけた。 いきなり開けるのも何だからコンコンとノックするとすぐに勢いよく扉が開き、何かが飛び付いてきた。 うわ…… もう少しで紙袋を落としそうになりながらも、空いた手で愛しい存在を抱き止める。 「お疲れ様」 「志季さん、会いたかった」 グリグリと顔をコートに擦り付けながら、七翔君が小さく呟いた。 「俺も会いたかったよ。なかなか時間作れなくてごめんな」 「ううん。僕も忙しくしてたので。あ、コーヒーの匂いがしますね」 顔を上げた七翔君が可愛くて、風早さんじゃないけど襲ってしまいそうだ。 「風早さんがカルーア入りのティラミスを出してくれたんだよ」 「カルーアってお酒ですよね。どんな味なんですか?」 俺からティラミスに関心が移るのが嫌だなんて、末期だな……。 「それはまた今度教えてやるよ。それよりそんな薄着じゃ寒いだろ。これ、風早さんからの差し入れ。まだ温かいと思うから早めに食べて」 これ以上はヤバい。さっさと渡して退散しよう。 だけど、何故か七翔君が離れてくれない。 「七翔君、離して」 「嫌です。志季さん、怪しい。もしかしてパーティーで何かありました?」 パーティーって平岩クリニックのしか思い浮かばないけど、七翔君には言う機会なかったし、何だろ?
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