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「志季さん、ご飯は?」
「軽く食べたよ。七翔君は?」
「僕も」
「何食べたの?」
「サンドイッチ。風早さんが差し入れてくれたんです」
「風早さん、まめだね」
「はい。肝心の薫さんは新年用の新作ケーキの試食をしてましたが……」
薫さんはもう、クリスマスの次を考えてるんだな。経営者って大変だ。
「新作ケーキか。楽しみだ」
「はい、僕も楽しみです。あの……、何か買って行きますか。家今何もなくて……」
「いい。七翔君がいてくれるだけでいいよ」
七翔君の耳に唇を寄せて囁く。
「七翔君に触れたくてたまらない」
大人げない事は分かってるが、これ以上我慢できそうもない。
「し、志季さん、もう知りませんよ」
七翔君が少し怒ったように乱暴に俺の腕を掴み、背を向けた。ぐいぐいと引っ張られるままに着いていくと、あっという間に七翔君のアパートにたどり着いた。
「どうぞ」
「おじゃましま………ん」
少し伸びをした七翔君が俺を玄関に押し込みながらキスをしてきた。
七翔君からこんなに激しく求められる事が初めてで戸惑ったが、次第にキスに溺れていく。
足りない。もっともっと七翔君が欲しい。
気持ちを押さえられず、俺からも彼を求める。
志季さんが足りない、もっともっと欲しい。
七翔君の気持ちが唇から伝わり、『あー同じなんだ』と嬉しくなる。
お互いを求める気持ちがぴたりと重なり、体の奥がカッと熱くなった。
もうダメだ。
唇を放さないまま七翔君を抱き上げる。
かつん。
いつもと違う音で靴を脱いでないことに気づくが、その数秒さえも惜しくてそのまま奥に進み、七翔君をベッドに下ろす。
微かな月明かりに照らされた七翔君から立ち上る色気がすごくて思わず息を飲んだ。
なのに。
「志季さん、カッコ良すぎ……」
ああ……この可愛い生き物は、どこまで俺を煽れば気がすむんだろう。
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