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部屋に戻っても七翔君はまだ眠っていた。 このまま何も言わずに出かけるのは嫌だが、起こすのもなぁ。 今日はお店が休みだって言ってたし。 「行ってきます」と心の中で呟いて、七翔君の頭をそっと撫でる。 そうだ。 鞄の中からリボンのついた長方形の箱を取り出すと、サイドボードに置く。 いつ気づくだろう。喜んでくれたらいいな。 もう一度頭を撫でて背を向けると 「志季さん……」 少し掠れた愛しい声が聞こえた。 七翔君が体を起こそうとしていたので、駆け寄って支える。 「体は大丈夫?」 「体は……たぶん大丈夫です」 「良かった。寒いから布団に入って」 「あっ……」 裸なのに気づいた七翔君が、頭から布団に潜り込んだ。 「おーい」 呼び掛けると、ゆっくりと頭だけ出す。 「ちゃんと顔見れて良かった」 「仕事ですか?」 「うん、休めなくてごめん」 「謝らないで。僕の方こそ引き留めるような言い方をしてごめんなさい」 「いや、俺も本音は行きたくないんだ。だけど、年末は忙しくて」 「わかってます」 健気に微笑む七翔君が可愛くて、額にキスを落とす。 「帰り、また来てもいい?」 「はい、待ってます」 「なんか頑張れそうだ」 さっき置いた箱が視界に入ると、直接渡したくなった。 「これ、クリスマスプレゼント」 「えっ」 布団から出てきた七翔君がプレゼントを受け取る。 「僕に?」 「気に入るか分からないけど……」 「ありがとうございます。すごく嬉しいです。あの、開けてもいいですか?」 「どうぞ」 リボンをほどくと大切そうにサイドテーブルに置き、次いで包み紙を綺麗にはがした。 一度俺を見てから、白い箱を開ける。 「綺麗」
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