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あれ、この人何だか見たことあるようなと思っていたら、向こうもそう思っていたようで。
「もしかして美琴ちゃんのお兄さんですか?」
やっぱりと笑顔になった彼が顔を傾けると、柔らかそうな茶色の髪がさらりと揺れた。
あの髪は……。
「君はケーキ屋のバイト君だ」
「はい、花咲 七翔といいます。美琴ちゃんとは大学のゼミが一緒なんです」
「ああ、君だったんだ。妹がお世話になってます。俺は美琴の兄で、星宮 志季といいます。この間はチョコプレートありがとう。美琴、とても喜んでいたよ」
「良かったです」
バイト君が嬉しそうに笑った。
「チョコ文字すごく上手かったけど、バイト長いの?」
「大学1年からなので2年半です」
「いや接客も完璧だしチョコ文字も上手いから、もっと長いと思ってたよ。花咲君だっけ?これからも妹と仲良くしてやってくれな」
「はい」
いい返事のあと、彼が「あの……」と付け足す。
「七翔って呼んでもらえませんか?花咲って女子みたいで苦手なんです」
綺麗な名字だが、確かに女性的かもしれない。
「じゃあ、七翔君って呼ばせてもらうね」
「はい。僕も志季さんて呼ばせていただいてもいいですか?」
「いいよ」
「嬉しいです。志季さんって素敵な名前ですね」
死期と読みが一緒だからと祖父には反対されたそうだが、俺は案外気に入っているので、誉められると素直に嬉しい。
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