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「浮気は許さないよ」
突然、鋭い声が飛んだ。
「浮気?するわけないだろ。俺にはお前がいるんだから」
「どうだか……」
「信じないんだったら、証明してみようか?」
「どうやって?」
「キス、とかどうだ?それ以上でも俺は一向に構わないが」
え、このワイルドな人がさっきまでのバーテンダーさん?
「ばかじゃないのか?いくらお前の店だからって、キスなんてするわけないだろ」
「お前が証明して欲しいって言うから」
「俺はそんな事言ってない」
あまりの雰囲気の違いに俺が戸惑っている間も、バーテンダーさんは後ろの人とポンポンやり取りをしている。内容を聞くと恋人同士の喧嘩のようだが、後ろから聞こえるのはどう聞いても男の声だ。
おろおろする俺とは対照的に、隣の七翔君は出されたアイスコーヒーを平然と飲んでいる。
「志季さん、落ち着いてください。この二人はいつもこんなだから。それよりパスタ食べないと美味しくなくなっちゃいますよ」
「ああ、うん………」
半分上の空でペペロンチーノを食べていると……。
「ほら、ここついてる」
七翔君が俺の頬を人差し指で触って、笑いながらその指を舐めた。
「あれ、その人七翔の彼?」
「違うよ。この人はこの前お店にガトーショコラを買いに来てくれたお客様で、僕の大学の友達のお兄さん」
えーっとちょっと混乱する。
というか、七翔君、今俺の頬に付いてた何かを食べたよな。何で?まだお腹空いてるのか?
それと、七翔の彼ってなんだ………。
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