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やっぱり気になる。
勇気を出して後ろを振り向くと、長身の男の人が立っていた。
「ご来店ありがとうございます。俺は『パティスリー薫』のオーナーをしている神無月 薫といいます。ガトーショコラ、いかがでしたか?」
パティスリー薫………って、ケーキ屋の名前だ。
薫って名前から来てるんだな。
それにしても、ずいぶん若そうだけどオーナーなんだ。すごい。
「あ、俺はすぐそこの製薬会社で働いている星宮志季と言います」
つい癖で名刺を出してしまったが、オーナーは優雅に名刺を受け取り、鞄から自分の名刺を取り出して渡してくれた。
いい人だ。
「ありがとうございます。えっと……ガトーショコラ、すごく美味しかったです。俺甘すぎるの苦手なんですが、すごく食べやすくて二切れも食べてしまいました。両親も妹もお代わりして、あっという間に無くなってしまいました」
ケーキ屋のオーナー……確か神無月さんといったかな……は目を大きく見開いた後、俺の手を両手で掴み上下ににブンブン振った。
「あの……」
「気にしないで。嬉しすぎて言葉にならないだけだから」
バーテンダーさんがニコニコ笑いながら神無月さんの行動の意味を説明してくれるが、これはいつ終わるんだ?
「薫さん、志季さんがびっくりしてるでしょ。いい加減離してください」
七翔君が神無月さんから俺の腕を解放してくれた。
「志季さん、薫さんはオーナー兼パティシエで、ケーキは薫さんの子供みたいなものだから、誉められると嬉しくて泣いちゃうんですよ」
子供みたいか。手間を惜しまず丁寧にに作ったんだろうな
「ショーケースの中のケーキもどれもすごく綺麗で、食べるのが勿体ないくらいだった……」
キラキラ輝くケーキを思いだし呟くと、「ありがとう」と神無月さんにハグされた。
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