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どう思ってるも何も会ったのはたった2回で、きちんと話すのは今日が初めてなのに……。
「風早さん、止めて!」
七翔君が叫んだ。その悲痛な声に一瞬辺りが静まり返る。
「ごめん、調子にのり過ぎた。志季君もごめん」
「いえ、俺は………」
頭を下げたままの風早さんに声をかけようとするが、何も言葉が浮かんでこない。
すると七翔君がへらりと笑って鞄を引き寄せた。
「なんかすみません。僕帰りますね」
「え、七翔っ」
カウンターに千円札を置くと、薫さんの声も聞かずに椅子から立ち上がる彼を放っておくことが出来ず
「あ、俺も失礼します。ご馳走さまでした。足りなければ次払います」
同じようにカウンターに二千円を置くと、俺は急いで七翔君を追った。
ドアのすぐ外で七翔君に追い付く。
「待って」
気がつくと腕を掴んでいた。
「なんで追いかけてくるかな。放っておいてくれたら、困らせないですむのに」
聞いてはダメだと心のどこかで誰かが叫ぶ。だけど、無理だよ。例え困らせられてもこのまま知らんぷりするよりは数倍マシだ。
「俺は多分七翔君の望む答えはあげられないと思う。だけど、何もなかった事には出来ない」
「志季さん……絶対後悔しますよ」
「それでも、聞きたいんだ」
思わず手に力が入り、七翔君が痛そうに顔をしかめた。
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