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慌てて手を放すと、大丈夫ですと笑う。 「僕の家、すぐそこなんです。……良かったら来ませんか?」 「じゃあ、お邪魔させてもらうよ」 こんなところでする話じゃない。そんな事にも頭が回らないくらい混乱している。 だけど、桃花さんと話してから一つだけ決めた事があるんだ。 俺は今まで恋愛に対して逃げていた。学生時代に告白された時も、周りにからかわれるのが嫌で勉強を理由に断ったり、社会人になっても仕事を理由に逃げていた。それで桃花さんに振られたんだけど。 逃げて後悔するよりは、ぶつかって後悔する方がマシだって気づいたから。 七翔君の家は、バーから徒歩2分の所にある二階建てのアパートだった。 「散らかってますが」 小さな玄関で靴を脱ぐと、すぐ右に小さなキッチンがある。左にある扉はトイレと浴室だろう。そして、その奥には六畳ほどの洋間があった。 散らかってると聞いたが、シングルのベッドにTシャツと短パンが無造作に置かれ、床にケーキの本が数冊あるが、それ以外は綺麗に片付いている。 「俺の部屋より綺麗だよ」 「本当ですか?」 「ああ」 「そんな風には見えないのに」 七翔君が笑ってくれて、少しだけ緊張が解れた。
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