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はぁーと大きなため息が聞こえた。
「何で志季さんが僕より泣いてるの?顔腫れちゃうよ」
「う………」
そうだよな。俺が泣く資格なんて……。
「でも、嬉しかった」
「七翔君?」
「嬉しかったよ。僕の気持ちをきちんと聞いてくれて、その上そんな風に泣いてくれて。ねえ、嫌じゃなかったら、友達になって欲しい」
「友達?」
「……本当は付き合って欲しいけど……」
素直なところが可愛い。
「じゃあ、友達からね。付き合うかどうかは、今は考えられない」
「分かってる。志季さん、器用そうじゃないもんね」
「おい、バカにしてるだろ」
6歳も年下の七翔君の方が大人でちょっと悔しい。
でも、彼に笑顔が戻って良かった。
「ねえ、その顔で帰るの?」
七翔君が携帯で俺を撮影して、はいと見せてきた。
うわ、ひどい顔だ………。
泣き腫らした目に、赤い鼻。女の子ならまだしも30歳手前の男だと情けないとしか言いようがない。
「顔洗わせてくれる?」
「部屋出て右の扉だよ」
「サンキュー。あと、その写真消してくれよ」
「えっ……と……」
友達になったからか、七翔君の言葉が少し親しげに変わった気がする。それがちょっと嬉しくて、彼が写真を保存したままなことに気づかなかった。
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