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モーニングを食べに行くのはやめにして、朝は買い置きのカップ焼きそばを二人で食べた。
「久しぶりに映画でも見るか?」
「そうだね、何かやってるかな?」
スマホで映画の情報を調べている美琴を観察するが、今朝のように無理やり明るくふるまっている感じはない。
そんなにすぐに忘れられないのは分かってるが、泣くことによって少しでも気持ちが軽くなればいいなと思う。
「あんまりいいのやってないよ」
「そうか」
「うん。お兄ちゃんは見たいのあるの?」
「いや別にないよ」
「じゃあ他にやりたいことないの?」
「俺は、洗濯と掃除と買い物くらいだな」
「ぷっ、何それ。そんなんだとモテないよ。しょうがないから私が手伝ってあげる」
洗濯機を回している間に掃除機をかけ、その後久しぶりにベランダに洗濯物を干した。帰宅が遅くなることも多いので普段は大抵部屋干しだから、取り入れるのが楽しみだ。
秋の気配を感じながら美琴と駅まで歩き、すぐに来た電車に乗って会社と同じ駅で降りた。
「休日出勤してるみたいだ」
「お兄ちゃんは、毎日ここに来てるんだね。ねえ、お兄ちゃんの会社ってどれ?」
「あれ」
俺が指差したビルを美琴が見上げる。
「大きいね、さすが有名な製薬会社だ。………ねえ、お兄ちゃんはどうしてMRになろうと思ったの?」
「急にどうした?」
「急じゃないよ。私も来年就活だから、色々考えてるんだよ」
小さい小さいと思ってた美琴が来年就職か。もう21歳だもんな。
そう言えば去年の成人式の着物姿綺麗だったな。
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