917人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ
大丈夫ですかと声をかけるものの、近づく勇気はない。
その時、後ろから聞き覚えのある声がした。
「星宮君見つけた。課長がウィスキー飲みたいって言ってるんだけど、大丈夫かな?」
この人は確か経理の定峰さんだ。
「ウィスキーですか……ちょっと確認してみないと何とも……」
一応飲み放題にはしてるが、その中にウィスキーが入っていたか覚えてない。
「悪いけど、確認してもらえるかな?」
「はい。でも………」
小桜さんを残して行くわけにもいかない。
俺の視線を辿った定峰さんが、うずくまる小桜さんを見て「あっ」と叫んだ。
どうしよう……と蒼白になる俺とは対照的に、定峰さんの顔が笑顔になる。
「小桜さん酔っちゃったんだ。オッケー、後は私が引き継ぐから星宮君は行っていいよ」
「いいんですか?」
「うん、私酔っぱらいを介抱するの得意なので任せて」
渡りに船とはこの事だ。小桜さんは酔ってるわけではないが、これ以上かかわり合いたくないので定峰さんに任せる事にしよう。
「ではよろしくお願いします」
「もちろん。星宮君もご苦労様」
小桜さんが「おい」と叫んだ気がしたけど、気にしない。定峰さんに思う存分介抱されて下さいね。
少しだけ気分が浮上した俺は、またあの大変な飲み会の席に戻って行った。
最初のコメントを投稿しよう!