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足が止まる。
「志季君どうしたの?」
風早さをんが心配そうに声をかけてくれるが、どう説明したらいいのか分からない。
「俺、やっぱり……」
「座ればいいだろ。それとも俺が出ていこうか?」
小桜さんがいつもの軽い口調ではなく、責めるように強く言葉を放った。
「そこまでは………」
「じゃあ、何だよ」
まるで俺だけが悪いみたいに言われて腹が立つが、単なる客である俺が彼を追い出す事なんて出来ない。
「わかりました、座ります」
売り言葉に買い言葉みたいになって、それでもなるべく小桜さんから離れた席につく。
「二人は知り合いなの?」
「同じ会社なんだよ」
俺の態度が気に入らないのか、小桜さんが不機嫌そうに答える。
「そう言えば慎も製薬会社だって言ってたけど、志季君と同じ会社だったんだ」
「志季君って……ああ、星宮君の名前か。そうそう、それも向かいの席なんだよ」
「へえ。お前、志季君に何かしたの?でないとこんなに嫌われるはずないもんな。そうだな……キスとか?」
「…………」
見事に言い当てられてびっくりしていると、テーブル席から「キス!」と叫び声が上がった。
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