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何度か寝たことある、か。風早さんと小桜さんはセフレだったって事か……。 「気になる?」 頷くと、風早さんがカウンターをトントンと軽く叩いた。 座れって言うことかな? もとの場所に黙って腰かけると、目の前にジン・ライムが出される。 「ゲイの話なんて、素面では聞きにくいからね」 「そんな風に思ってません」 「そっか、ごめん。でも、おごるから飲みながら聞いてよ」 もう一度頷くと、風早さんは優しい表情でありがとうと言った。 「昔話なんだけど、そうだなもう10年近く前になるかな。勉強があまり好きじゃなかった俺は、高校卒業した後おじさんがやってるレストランに就職したんだよ。そんなに大きくはないけど、横浜っていう場所がら外国人も多く、割と流行っていた。仕事は好きで楽しかったんだ。けど、その頃の俺は大人になっても女の子に興味が持てないことに悩んでた」 共感できないのに相づちを打つのもなと思い、ただ黙って話を聞く。 「そんな時、たまたま入った居酒屋で大学生の(しん)に会ったんだよ。酒の勢いともう会わないかもしれないという気安さから、俺は悩みを打ち明けていた。そしたらこいつもそうでさ。それで男同士試してみようかって、勢いで」 「それで?」 聞いたのは、俺じゃなくて薫さんだった。
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