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七翔君を部屋に通し、コーヒーを入れた。 「ブラックで良かったんだよね?」 コーヒーはブラック、ケーキは何でも好きだけど中でも一番のお気に入りは薫さんが作るガトーショコラ。ご飯は和食より洋食が好きで、ハンバーグやスパゲティ、オムライス等お子さまランチにあるようなメニューが大好き。 何度か会って話している内に七翔君の好みを自然と覚えてしまった。 七翔君は、ありがとうございますと言いながらカップを包み込むように手を添える。 「あたたかい」 ここに来てからずっと堅い表情をしていたが、少しだけいつもの彼に戻ったみたいでホッとする。 そう言えば、どれくらい待っていたんだろう。冬が近づき、夜になると気温がぐっと下がる。 少し赤い彼の頬に手を伸ばすと七翔くんが驚いて体を揺らしたため、コーヒーが溢れて彼の白い手にかかった。 「あつっ」 「ごめん。すぐに冷やさないと」 戸惑う七翔君をキッチンまで連れてきて、赤くなった手に冷たい水をかけた。 「志季さん……自分で出来るから」 「動かないで。冷たいのは分かってるけど、もう少し冷やさないと」 「うん、でも、ちょっと………」 七翔君が何か言ってたが彼の綺麗な手に痕を残すのが怖くて必死で冷やし続けた。 「もう、大丈夫だから」 「あ、そうだね」 レバーを上げて水を止め、七翔君の手を観察する。 「まだ痛い?」 「いえ、もう大丈夫です。だから離して下さい」 真っ赤な顔をした七翔君が潤んだ目で訴えてきた。 「どうかした?」 「どうもしません。ただ、志季さんがあんなに体を密着させるから……。いえ、何でもないです」 恥ずかしそうにうつ向く七翔君がすごく可愛く見えて、頭を撫でてしまう。 彼が美琴と同じ年だから、弟みたいに思ってるんだろうか?でも、いくら妹と同じ年だからって普通は21歳の男の頭なんて撫でないのでは? まさか、七翔君だから………。
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