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「辛いときは泣いていいんだよ。前に俺の泣き顔も見たただろ、だから………な」 「志季さん……僕、父さんに呆れられたのかな。もう僕の事、好きじゃなくなったのかな」 七翔君は俺の服をぎゅっと握りしめて泣き出した。 「そんなわけないだろ。ただ、ご両親もびっくりして、どうしたらいいのか分からなくなってしまったんだよ」 「でも……」 「あのさ、子供の頃はまだしも、ある程度大きくなってからの人間って、年を取ってもあまり変わらない気がするんだ。その証拠に、20歳ってすごく大人に見えたのに、自分がその年齢になったら高校生の頃とほとんど違わないだろ?」 「はい」 「それと同じ。もちろん長く生きて色々経験を経て、感情をコントロールすることができるようになるかもしれない。だけど、ずっと平常心でいるなんてできないし、ましてや大切な子供の事だろ。苦労するって分かってて気楽に頑張れなんてとても言えないよ」 七翔君が涙に濡れた顔を上げた。 「じゃあ父さんは……」 「もちろん、七翔君が大好きに決まってる」 「………志季さん、ありがとう」 ふわりと笑う七翔君を見た途端に、今までとは明らかに違う感情が湧き上がった。美琴に対して感じている愛情とは違うもっと激しくて気持ちが揺さぶられるそれは……恋……なのかな。 一旦認めてしまうと、揺るぎない確信に変わる。 俺は七翔君が好きなんだ。そっか、そうなんだ。 「こちらこそありがとう。辛いとき、俺を頼ってくれてすごく嬉しいよ。ありがとう」 好きな人が自分の腕のなかにいるのがこんなに幸せだなんて知らなかったよ。 ………ああ、また泣きそうだ。
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