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「どうかなさいましたか?」 「あの……妹が誕生日でガトーショコラを頼まれたのですが、もっと誕生日ケーキらしいケーキも買った方がいいのか迷ってて」 「なるほど。そちらに誕生日用のホールのケーキもご用意しておりますし、ガトーショコラにメッセージ入りのチョコプレートをお付けすることもできますよ」 見た目は今時の大学生という感じなのに、言葉遣いが丁寧で人当たりも良く、客へのアドバイスも的確だ。 なんかすごいな。 入社してすぐに病院に挨拶に行った時、緊張しすぎて挨拶さえろくにできなかなった黒歴史を思い出す。今でも先生方にあのときに比べたら成長したねとからかわれるくらい酷かった。 こういうのは年齢関係なく、資質なんだろう。 「じゃあ……チョコプレートをお願いします」 「メッセージはどういたしますか?」 「『美琴、誕生日おめでとう』でお願いします。美琴は美しいに楽器の琴です」 「美琴さんですね。かしこまりました」 にこりと微笑んだ彼はチョコペンを取り出し、プレートにさらさらと文字を書いていく。 「こちらでよろしいですか?」 「あ………はい、上手いですね」 てっきり奥で働いているパティシエに書いてもらうのかと思っていたのでびっくりしていると、バイト君が「ありがとうございます」と照れたように笑った。 可愛いな。 何故かバイト君と美琴が重なって、親しみを覚えた。 「ありがとうございました」 ガトーショコラを入れた袋が思ったより重くてびっくりした。果たして美琴は喜んでくれるかな?
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