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「志季君いらっしゃい」
「薫さん、こんばんは。今日は暑かったですね」
「もう秋なのにね。まだ、仕事?」
「はい。でもその前にちょっと休憩です」
担当病院を回った後に週に2回くらいの割合で『パティスリー薫』に寄るようになった。昼間は女性客で賑わう喫茶スペースも、夕方以降は人が少なくなるので男1人でも入りやすい。
ここのコーヒーは深煎り豆を使用しているので、味の濃いガトーショコラにピッタリだ。スフレチーズケーキやシフォンケーキ、フルーツタルトも甘さ控えめで美味しい。
「ホットコーヒーとガトーショコラを下さい」
バイトの女の子に告げながら、店内を見回す。
━━七翔君いないんだ。
ちょっとがっかりする。美味しいコーヒーとケーキ、それに七翔君の笑顔があれば疲れなんか吹き飛ぶのに。
「ごめんね、七翔は今日休みなんだよ」
普段は店にでない薫さんが、コーヒーとケーキを運んできてくれた。
「別に……」
なんか全てバレてそうで気恥ずかしい。
「俺も休憩しようかな」
他に客がいないからか、薫さんが俺の向かいの席に腰かけた。そして小さな声で囁いた。
「何か困った事があれば俺も御影も聞くからね」
「えっ?」
「俺達一応先輩で先に色んな壁にぶち当たってきたからさ」
ああ、男同士だとやっぱり色々あるんだな。
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