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その仕草が子供みたいで可愛くて、思わず「可愛いなぁ」と呟いてしまった。 ガバッと顔を上げた七翔君が、キョロキョロと周りを見回した。 「どうしたの?」 「可愛いって聞こえたから、子供とか………女の子とか………居るのかなって思って」 「へえ、七翔君も可愛い女の子に興味があるんだ」 少しだけショックなのは、やっぱり嫉妬なのか。 もしかしたら七翔君もやっぱり女の子の方がいいって思ったのかもしれない。好きだと告白されたから両思いだと思ってたけれど、桃花さんの時みたいにもうすでに俺以外に好きな人がいるのかもしれない。 「志季さん、どうしたの?」 あー、またダメなのかな。次はきちんと伝えるって桃花さんと約束したのに……。 その時、携帯のアラームがピピと鳴った。時間切れだ。 「俺もう行くな。仕事まだ残ってるんだ」 「あまり無理しないでくださいね。そうだ、志季さんの会社の前まで一緒に行ってもいいですか?」 「七翔君、用事があって店に来たんじゃないの?」 「来月の休み希望の用紙を出しに来ただけなので大丈夫です」 そんな訳でほんの数分ではあるが、七翔君と会社まで一緒に行く事になった。 すっかり暗くなった道を二人で歩く。 「夜はコートが欲しいですね」 「そうだな。体が慣れてないから、余計に寒く感じるのかもな。風邪ひかないように、明日からはもう少し暖かい格好にした方がいいよ」 「はい」 そんな他愛のない会話をしている内に会社のビルが見えてきた。もうすぐ七翔君とお別れだ。 俺が立ち止まると、七翔君も立ち止まった。 「あの、七翔君」 「何ですか?」 「えっと……今更だし、都合がいいとは思うんだけど……俺君が好きみたいだ。だから、俺と付き合って下さい」 七翔君が無言で見つめてくる。 その視線に耐えられなくなった俺は七翔君から返事を聞く前に逃げ出した。
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