8

2/9
前へ
/167ページ
次へ
「星宮さん、何かいいことありましたか?」 総務の人に言われて思わず頷きそうになった。 危ない、危ない。 七翔君と話し合った結果、俺達の事は誰にも言わないことにした。仕事関係だけじゃなく、家族や友人にさえもだ。もちろん妹の美琴にも。 知ってるのは薫さんと風早さんだけだ。あ、忘れてたけどもう1人、何故か小桜さんにもバレていた。 「いいことですか?うーん、何だろう?」 「朝からニコニコしてるから、何となく彼女が出来たのかなって思ってました。星宮さん、桃ちゃんが居なくなってからずいぶんと落ち込んでたから」 「ハハ、そうですね。彼女にはすごくお世話になったから」 笑って誤魔化しながら彼女から離れた。 「怖いなぁ………」 廊下に出てから思わず呟いた。 同じ部署ならともかく、ほとんど接点のない総務にまでバレてるなんて。 「わっ」 「そんなに驚かなくても」 小桜さんに背中をバシンと叩かれて、思わず叫んでしまった。 「痛いです」 「すまない。あれ、あの学生ともう喧嘩したのか?」 「えっ?」 「ずっと機嫌良かったのがそうじゃなくなってるんだ。誰でも気づくぞ」 最近小桜さんとはこんな風に自然と話せるようになった。 「俺、そんなにわかりやすいですか?」 「まあな。でもそれがお前の長所でもあるから。何考えてるのかさっぱりわからないやつよりも、よほど信用できるよ」 「ありがとうございます。小桜さんももう大丈夫ですね。最近元気がなかったから」 「そ、それはお前に恋人が………」 「こ、小桜さん。こんな所で言わないで下さい」 総務の目の前だなんて冗談じゃない。 俺は小桜さんを無理矢理引きずって部屋まで帰った。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

917人が本棚に入れています
本棚に追加