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「星宮さん、何かいいことありましたか?」
総務の人に言われて思わず頷きそうになった。
危ない、危ない。
七翔君と話し合った結果、俺達の事は誰にも言わないことにした。仕事関係だけじゃなく、家族や友人にさえもだ。もちろん妹の美琴にも。
知ってるのは薫さんと風早さんだけだ。あ、忘れてたけどもう1人、何故か小桜さんにもバレていた。
「いいことですか?うーん、何だろう?」
「朝からニコニコしてるから、何となく彼女が出来たのかなって思ってました。星宮さん、桃ちゃんが居なくなってからずいぶんと落ち込んでたから」
「ハハ、そうですね。彼女にはすごくお世話になったから」
笑って誤魔化しながら彼女から離れた。
「怖いなぁ………」
廊下に出てから思わず呟いた。
同じ部署ならともかく、ほとんど接点のない総務にまでバレてるなんて。
「わっ」
「そんなに驚かなくても」
小桜さんに背中をバシンと叩かれて、思わず叫んでしまった。
「痛いです」
「すまない。あれ、あの学生ともう喧嘩したのか?」
「えっ?」
「ずっと機嫌良かったのがそうじゃなくなってるんだ。誰でも気づくぞ」
最近小桜さんとはこんな風に自然と話せるようになった。
「俺、そんなにわかりやすいですか?」
「まあな。でもそれがお前の長所でもあるから。何考えてるのかさっぱりわからないやつよりも、よほど信用できるよ」
「ありがとうございます。小桜さんももう大丈夫ですね。最近元気がなかったから」
「そ、それはお前に恋人が………」
「こ、小桜さん。こんな所で言わないで下さい」
総務の目の前だなんて冗談じゃない。
俺は小桜さんを無理矢理引きずって部屋まで帰った。
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