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「星宮、一杯奢れ。それでチャラにしてやる」 ずいぶんと上から目線だけど、何だか子供みたいで憎めない。 「分かりました。好きなもの頼んでください」 「いいねぇ。御影(みかげ) 、1番高いの頼む」 うわ。本当に子供みたいだ。 「1番高いのねぇ………。かしこまりました」 風早さんは俺にいたずらっぽい視線を投げると、小桜さんの前にグラスを置いた。 「これが高い酒か。何て言う酒なんだ?」 「タンカレー。ジョン・F・ケネディが愛したことで有名なジンだよ。ちょっと癖があるけど、慣れるとうまい酒だよ」 「へぇ、いただきます」 小桜さんは味わうようにゆっくりと一口飲んで、「なるほどな、うまいよ」と言いながらもう一口飲んだ。 「ところでこれ、いくらくらいなんだ?」 「高さか?47.3だよ。因みに値段じゃなく度数だけどね」 「え………。なんかクラクラしてきた」 小桜さんがカウンターにつっぷしたのと同時に 「風早さん何か食べさせて」 愛しい人が店に入って来て、元気よく注文した。 「あ、志季さん……」 「七翔君こんばんは」 「はい、こんばんは。あれ、この人寝てるよ」 まだグラスにお酒を残したまま、小桜さんはアルコールに負けて寝てしまった。
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