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さっきまで怒ってたのに寝顔は笑ってるみたいだ。
「志季さん、余所見しないでください」
左隣に座った七翔君に腕を引っ張られた。焼きもちだろうか、可愛い。
「そうだ七翔君は週末はバイト?」
「日曜はバイトだけど……」
「じゃあ土曜日空いてたらデートしない?」
カシャンと床にスプーンが落ちた。隣を見ると七翔君が固まっている。
「大丈夫?」
肩を揺すっても上半身がぐらぐら揺れるだけだ。どうしていいか分からず困って薫さんを見ると、風早さんと目を合わせて笑っていた。
「あの、七翔君どうしたんでしょう?病気なら病院に連れていかないと……」
「落ちついて。七翔は病気じゃないよ」
「でも……」
「大丈夫だから。七翔、聞こえてる?お前がデートに行かないなら、俺が志季君とデートしようかな」
薫さんの言葉に七翔君がピクリと肩を跳ねさせた。
「ダメです。僕が志季君とデートするんです。薫さんは風早さんと行って下さい」
「えー、たまには御影以外とデートも……あ、いや冗談だよ。俺が御影以外に興味ないって知ってるだろ?」
「どうかな?薫は俺が慎とどうにかなるって疑ってるよな。だったらお前も有りうるんじゃないか」
「ごめん。疑ってる訳じゃないけど、気になるから……」
薫さんと風早さんの言い合いはじゃれあいみたいなものだから放っておくとして………。
「七翔君、大丈夫なの?」
「すみません。まさか志季さんからデートに誘ってもらえるなんて思ってなかったから、びっくりしちゃって」
「どうして?」
「だって……志季さんが告白したのを後悔してるのかなって思ってたから」
恋人になってから1週間。俺は嬉しくて舞い上がってたのに、七翔君はそんな事を考えていたのか。
「何でそんな風に思ったの?」
周りを気にしながら、七翔君が俺の耳に口を寄せた。
「だって、瞼にキスより先に進まないから……」
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