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先生と別れて中庭にやってきた。綺麗に手入れされた庭には寛げるように所々にベンチが置いてあるので少し前までは多くの人がいたが、さすがに寒くなった今は俺しかいない。
ため息をつきながらベンチに座る。
「冷たっ」
顔をしかめながらポケットから携帯を取り出し、七翔君の番号を表示させた。
さっき、右田先生に言った言葉が、鋭いナイフのように自分に跳ね返ってくる。
転勤になったら、俺達どうなるんだろう。
桃花さんは転勤のせいで元カレと別れた。寂しくなった彼が半年も経たない内に浮気したんだ。
勿論、離れてもちゃんと付き合っているカップルは沢山いる。けれど、いずれは一緒にいられるという確信があってこその物だろう。
俺の場合は同じところに戻って来ることはほぼない。桃花さんのように結婚を理由に希望を出すなどしない限り無理だ。
そんな辛い恋愛を七翔君に強いることになるんだ。
七翔君には後1年大学があるし、その後は薫さんのようなパティシエになるという夢がある。
ついてきて欲しいなんて言えるわけがない。
そもそも男同士でそれはないよな。
俺は初めてMRという仕事についたことを後悔した。
この仕事を選んだのは、大学のサークルの先輩の影響が大きい。将来に迷っていた時、先輩の会社を訪問して相談に乗ってもらった。その時先輩からMRの遣り甲斐や楽しさを聞いて自分もやってみたくなったんだ。中でも転勤があるというは俺にとって大きなプラス要素だった。全国各地に行けるのが旅行みたいに楽しみだったし、人間関係においても変化があった方がうまくいくと考えていたからだ。
なのに……。
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