917人が本棚に入れています
本棚に追加
ハクションと大きなくしゃみが出て、体が冷えていることに気づく。
とにかく今は明日のデートの事を考えよう。少なくとも半年、うまくいけば1年はこのままここで働ける。先の事なんて誰にも分からないのだから、今を精一杯楽しめばいいんだ。
「もしもし七翔君、遅くなってごめんね。明日の事で電話をくれたんだよね?」
「はい。あの、レンタカー借りてドライブ行きませんか?僕運転しますよ」
「いいね。でもレンタカーはいらないよ、俺が車出すから」
「志季さん、車あるんですか?」
「一応ね。あまり乗らないから実家に置いてて、バッテリーが上がらないように家族に使ってもらってるんだよ」
「そうなんですか?」
「うん。たまに乗るとぬいぐるみとか増えてて結構恥ずかしいんだけどね」
「えっ、ぬいぐるみですか?」
「そうそう。美琴が勝手に増やすんだ。前は助手席に大きな熊が乗っててびっくりした」
「明日もその熊乗って来ますか?見たいです」
「いいけど。……でもそうすると、七翔君は後ろに乗るの?」
少しの沈黙の後「やっぱりいいです」と聞こえた。
「えっ?」
「熊のぬいぐるみはいいです。僕を志季さんの隣に乗せてください」
「良かった。実は俺もそうしたかったから」
七翔君と話していると楽しくて、さっきまでの暗い気持ちがどこかに行ってしまう。
大切にしよう。
「七翔君、明日楽しもうな」
「はい」
最初のコメントを投稿しよう!