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えっと驚く七翔君を横目にみながら、ウィンカーを出して高速に乗る。道路は然程(さほど)混んでないみたいだが、ナビによると海までは1時間以上かかるらしい。 楽しくドライブするはずだったのに、何であんなことをきいてしまったんだろう。後悔し始めた俺の横で、七翔君がまっすぐに前を向いたまま話し出した。 「僕の初恋は、小4の時に通っていたサッカー教室のコーチでした。すごくサッカーが上手い彼に対して教室中の男子が憧れを抱いていたので、その時は僕の気持ちが恋だとは気づかなかったんですけど。それからもいいなと思うのは男子ばかりで、高校生の時にやっと自分がゲイだと気づきました」 七翔君は少し寂しそうに微笑んだ。 「自分が人とは違うと知り怖くなりました。認めたくなくてもがいて苦しんで……でもどうしても自分の好みを変える事が出来ませんでした。そんな時、何気なく応募したケーキ屋さんで薫さんに出会いました。偶然彼の恋人が男の人だって知った時はびっくりしましたが、自分が肯定されたように感じ涙が止まらなくなりました」 「………うん」 間抜けな相づちしか打てない自分が情けない。 自己嫌悪に陥る俺に大丈夫だよと微笑んでくれる七翔君は、俺にはもったいないほどのすばらしい恋人だ。
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