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「人と違っていてもいいんだって思えてからは、生きるのが楽になりました。それで薫さんにカミングアウトしたんです。薫さんは僕の話をきちんと聞いてくれて、風早さんのお店に連れていってくれました。二人のお陰で僕は自分を認める事ができたんです」 「そっか」 「はい。それからしばらくして、大学の先輩に告白されました。入学した時から好みだったと言われて嬉しかったんですが、僕は全く知らなかったので迷っていると、お試しでいいから付き合ってって言われてオッケーしたんです。ゲイじゃない人に片想いばかりだった僕に初めて彼ができました」 七翔君はうつ向いてぎゅっと手を握りしめた。 「彼は僕の家でしか会おうとしませんでした。大学で話しかけるのも誰かに話すのも禁止でした。初めは一緒に映画を見たりゲームをしたりして過ごしていたのですかが、やがて体を求められるようになって……でも無理でした。僕は彼を好きにはなれず拒絶してしまったんです。彼は僕を睨み付け、すぐにやらせてくれそうだから誘ったのにと言い放って出ていきました」 ああだから、七翔君は俺達が付き合ってる事を内緒にしたがったのか。父親と喧嘩した時、顔を見たかっただけだと言っていたのも、人気のない海に行きたいのも全てその先輩との事があったからなんだ。 俺はハンドルを握る手を見つめながら呟いた。 「運転中じゃなかったら、七翔君をこの手に抱き締めてあげれるのに……」 「えっ?」 「一人で苦しんでた七翔君に頑張ったねって言ってあげたいし、薫さんや風早さんに出会えて良かったねって一緒に喜びたいし、彼を拒絶してくれてありがとうって伝えたい。ついでにその彼を殴ってやりたいけど」 「…………志季さん」 七翔君の目からぽたぽたと涙がこぼれ落ちた。
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