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「海だー」 冬の日差しにキラキラ光る海を見て、七翔君が嬉しそうに叫んだ。 「外は寒いので車から見てようか?」 一応提案してみるが、たぶん聞こえてない。 「志季さん、見てください。こんな季節でもサーフィンしてる人がいますよ。寒くないのかな。あのスウェットスーツ……ウェットスーツかな……があれば大丈夫なんでしょうか?」 「どうかな……」 しばらく海を見ていた七翔君が、今度は砂浜に目をやった。 「誰もいないのかと思ってたけど、違いましたね。あ、ほらあそこに犬の散歩してる人がいますよ。あの大型犬可愛い。茶色で毛が長くて……触らせてくれるかな?それとも知らない人には吠えるんでしょうか?あ、ボールを追いかけてますよ。うそ、もう追い付いた。走るの速いですね」 海を見下ろす事が出来る展望駐車場に車を停め、温かい車内から二人で景色を見ている。駐車場には一台も車はなく、フロントガラス一面に少し暗い冬の海と砂浜が広がっている。寒がりの俺はこの景色で十分なのだが、七翔君は今にも飛び出して行きそうに隣でウズウズしている。 懸命に走る犬を見て七翔君が可愛い可愛いと叫んでいるが、俺には隣ではしゃぐ彼の方がよっぽど可愛く見える。 「志季さん、車降りてみませんか?」 あ、やっぱり聞いてなかった。 「………そうだね」 「早く行きましょう」 俺の腕を掴んで大きな目でじっと見つめてくる七翔君があまりにも可愛くて、思わず唇にキスをしてしまった。 「志季さん………」 「あ、ごめん」 うわ。 すぐに顔に熱が集まる。 タイミングとか周りの状況とか相手の様子なんて、全く考えてなかった。ただしたいと思ってしてしまったキスに、七翔君よりも俺の方が驚いていた。
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