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「ご、こほん」
後ろから不自然な咳払いが聞こえて振り替えると、七翔君がじっと俺と母親を見つめていた。
途端に母親が挙動不審になる。
「あ、私行かないと。本当にすみませんでした」
「いえ」
「じゃあ失礼します」
怒っているような七翔君を見た母親はもう一度頭を下げ、逃げるように子供と父親の方へ小走りで去っていった。
「七翔君……?」
はて、何で怒ってるんだろう。怒らせることなんてしてないはずだけど。
「どうして僕が怒ってるのか分かりませんか?」
「えっと……分からない」
正直に答えると、七翔君がやれやれという風にため息をついた。
「分からなければ教えてあげます。焼きもちです。僕は、志季さんがあの女の人と仲良く話しているのに嫉妬したんです」
「女の人って、あの人はお母さんだよ」
「でも女の人です。志季さんと話している時は母親じゃなくて女の顔をしてました。志季さんは、年上の女の人が好きなんですよね」
七翔君が、あっと小さく叫んで気まずそうに視線を反らした。
それって桃花さんの事だよな。でも、七翔君には彼女の事は話してない。じゃあ誰が……。
「もしかして小桜さんに聞いたの?」
桃花さんと小桜さんは直接会ってないが、彼女の事を話せる人は小桜さんしか考えられない。
「………はい」
やっぱり。
こ、ざ、く、らー。
外回りと言いながら喫茶店でサボってるの係長に言いつけてやるから。
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