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土地勘がないので適当に車を走らせていると、沢山の大漁旗がはためいている店を見つけた。
「あそこにしませんか?」
「そうしようか。でも満員かもしれないな」
店の前に広い駐車場があるが、俺達が着いた頃にはほぼ埋まっていた。
引き戸を開けると「いらっしゃい」という威勢のいい声で迎えられ、料理を運んでいた店員から「奥空いてるよ」と声がかる。
沢山あるテーブルもこれまたほぼ埋まっており、客達はテーブルの上にある七輪で魚介を焼きながらビールを飲んでいた。
「美味しそうですね」
「そうだね。車じゃなかったら飲めるのにな」
ビールはあまり得意じゃないが、みんながあまりにも美味しそうに飲んでいるからか少し気になる。
「僕運転するので、飲んでください」
「ありがとう。ちょっと言ってみただけだから気にしないで」
七翔君の優しさに笑みが漏れる。
「でも……」
「いいから。さて、何食べようか?」
さんざん迷ったあげく、スルメイカとホタテと海鮮丼を注文した。
すぐに運ばれてきたホタテとイカを七輪に並べてビール代わりに熱い緑茶を飲むと、冷えてた体がほかほかしてきて思わず顔が緩む。
「志季さん、幸せそう」
「ハハ、そうかな」
「はい。あ、焼けてきましたよ」
いい具合に焼けたホタテを皿に取り醤油をかけると、腹の虫がグーっと鳴った。
「いただきます」
二人で手を合わせ、香ばしく焼けたプリプリのホタテにかぶりつく。ん、うまい。
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