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七翔君がへ?と不思議そうな顔をした。
「最初と最後に食べるんですか?」
「うん。ほら、こんなに沢山の具が乗ってても、好きなネタが一番目につくだろ?一切れしかなかった場合は仕方がないけど、いくつかあればまずはそれを食べて違うネタを食べて最後にまた食べるみたいな食べ方をしちゃうんだ。欲張りなのかな」
いいえと言いながら、七翔君はお箸に一口分のご飯とサーモンを綺麗に乗せて頬張った。幸せそうに目を細めているから、サーモンも好きなんだろう。
分かりやすいなぁ。
七翔君を真似て、その上にイクラも乗っけて親子丼?を作って食べる。これもうまい。
「たぶん、欲張りなのは僕の方です。だって、取られないように好きなものを最初に食べちゃうんですから」
甘エビの頭をしゃぶりながら七翔君が笑う。
「確かに。でも俺も寿司桶に入ってる握り寿司をみんなで食べる時は、取られないように好きなネタから食べるよ。みんなが食べてそれでも余ってたら、好きなのをもう一貫食べる」
「志季さんは何が好きなんですか?」
「そんなに好き嫌いはないよ。強いて言えば光り物って呼ばれる魚が苦手で、それ以外はほぼ大丈夫。北海道で食べたウニとホタテは絶品だったし、マグロも好きだし、甘エビやイカも好きだよ。ただ、サーモンは油っこいから沢山は無理かな。ホタテ以外の貝もちょっと苦手かも」
俺が答えると、七翔君がぷっと吹き出した。
「めっちゃ好き嫌いあるじゃないですか」
「そうかな?気づかなかった」
普段ならあっという間に食べてしまう量だが、七翔君と話しながら食べたからか、思いの外腹一杯になった。
「お腹一杯です」
「良かった。行くか?」
「ありがとうございました」という元気な声に見送られて店を出る。
「連れてきてもらってありがとうございます」
「どういたしまして。でも、まだ終わりじゃないから」
「はい。腹ごなしに砂浜でも走りますか?」
「えっと、それは勘弁してほしい」
本当に走りだしそうな七翔君を慌てて止めて車に押し込んだ。
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