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海に行くとしか決めてなかったので、しばらくドライブすることにした。
昼飯を食べてからそろそろ30分。車を走らせながら隣の七翔君をチラリと盗み見ると、さっきまではしゃいでいた七翔君が今は静かに窓の外を眺めている。
疲れたのかな?
それとも俺が何か気に障ることを言ってしまったのか?
背中を向けられていると、拒絶されてるようで悲しくなる。
「あの………」
恐々声を掛けると、七翔君が勢いよく振り向いた。
「志季さん。僕、こんなに楽しくていいんでしょうか?」
「え?」
彼の表情は真剣そのものなんだけど、言ってる意味がいまいち理解できない。
「もう一回言ってもらえる?」
「今日すごく楽しくて……こんなに楽しくていいのかなって思って……」
「俺はそんな風に言ってもらえてすごく嬉しいけど、楽しいとダメなの?もしかして前の彼い言われたことを気にしてるの?」
「…………はい」
やっぱりそうか。別れて数年経っても、その人はまだこんなにも七翔君に影響を与えているんだ。
「七翔君聞いて。友達でも家族でも恋人でも、好きな人といて楽しいのは当たり前の事なんだよ。デートもそうだよ。同性とか異性とか関係なく、好きな人と一緒にいたいと思うのは自然な事なんだ。だから、後ろめたいなんて思わなくていいんだ」
「………はい」
良かった、七翔君の顔に笑顔が戻った。でも、これだけは伝えないといけない。
「ただね、七翔君が気にしてることも間違いじゃないと思う。人前で過剰なスキンシップをする恋人同士を不快に思う人は多い。ましてや同性カップルともなれば、手を繋ぐという軽いスキンシップでも不快に思う人は少なくないだろう。だから、そのあたりは考慮しないといけない。けど、今日みたいに一緒に出かけて楽しむのは全然構わないと思う」
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