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エレベーターを待っていると、コツコツというヒールの音が響いた。
「桃花さん、おはようございます」
おはようと言っても、担当の病院に顔を出してから出社したのでもう11時だ。
「おはよう星宮君。今日も暑いわね」
桃花さんは顔をしかめるが、全く汗をかいている様子がない。
「桃花さん、お昼は?」
「ああ、さっきそこで買ってきたの。クラブハウスサンドイッチ。星宮君は?」
「俺も買ってきました」
会社のビルには食堂がないので、昼は病院帰りに食べてくるか買ってくるかだ。今日は少し時間が早かったのでワンコイン弁当を買ってきた。
「それは何?エスニックな香りがするけど」
「ガパオライスです。下に売りに来てました」
「へえ、美味しそう」
「良かったら交換しますか?」
いいの?と言う桃花さんに大きく頷く。あなたの役に立てるならどんな小さな事でも嬉しい。
「じゃあ、デザートのプリンもあげちゃおうかな」
食べれないわけじゃないが、甘いのは苦手だ。
「プリンは大丈夫です」
「あ、そうか。星宮君は甘いものが苦手だった」
「………はい」
こんな風なやり取りは今までに何度かあり、その度に桃花さんにとって俺が単なる後輩でしかないことを思い知らされる。
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