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返事をしない俺に焦った佐藤さんは、何故か帰ってきたばかりの小桜さんに声を掛けた。
「あの、小桜さんも一緒にいかがですか?」
「えっ、何?」
突然誘われた小桜さんは、何の事という風に俺を見た。
俺の心に悪魔が囁く。
「俺週末は予定があるので、申し訳ないですがパスします。じゃあ小桜さん、よろしくお願いします」
「え、どういうこと?」
慌てる小桜さんを横目に、さっさと荷物を持って部屋を出ると「ほしみやー」と後ろから情けない声が聞こえてきた。
小桜さん、ごめん。でもこれで桃花さんの事はチャラにするから。
ぺこりと頭を下げて出ていく。
佐藤さんがどうして俺に声をかけたのかは分からないけど、誰でもいいのなら小桜さんにお願いしよう。
週末か。七翔君のバイトがなければ会いたいな。
ポケットに入れたスマホを取り出してロックを外し、アルバムを開く。
「やっぱり可愛い」
高校生に撮ってもらったツーショットは大切に保管してある。1枚だけかと思っていたら知らないうちに何枚も撮られてて、1番は耳を真っ赤に染めて涙目で俺に何かを訴えている七翔君だ。
もう会うことはないが、もし偶然あの高校生に出会えたら、焼き肉でも何でも奢ってあげよう。
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