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*** 時計を見ると23時。 新薬の説明を終えて帰ろうとしたら、外科部長一行に捕ってしまった。なんでも今日は外科部長の57歳の誕生日だそうで、ちょうど取り巻きの医者連中を連れて行きつけのクラブに繰り出すところに出くわしてしまった。 もちろん断るなんて出来ず、笑顔を貼り付けて高級クラブにお供した。 二次会の誘いを断りタクシーに飛び乗ると、自然に風早さんの店の名を告げていた。 それにしても腹が減った。ピーナツと濃いめのウィスキーしか腹に入れてないから当たり前だけど。 バーに入ると、風早さんの優しい笑顔に迎えられてほっとする。 よく見ると、カウンターの隅に黒い固まりがある。 あれは……小桜さん? 「こんなに遅くまで残業?」 「サービス残業です。簡単に言うと先生のご機嫌取りなんですが」 「それは大変だったね。よかったら軽い夜食作ろうか?」 「ありがとうございます」 風早さんにお礼を言っていつもの席につく。 「あの……小桜さんはどうしたんですか?」 「ああ、気にしないで。あいつは女の子にべたべたされるのが苦手なんだけど、無理矢理デートに誘われたらしくて」 風早さんが可笑しそうにクックッと笑った。
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