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絵の鑑賞と言っても、たいていの人間が「ああ、花瓶の絵か。綺麗だな」と完結させてしまうように、恵もまたその性質だった。
これは花の絵、これは人の絵、と淡々と鑑賞らしきものをしているうちに、入り口から一番遠い壁までたどり着いていた。一つの絵が目に留まる。
ノートの半分もない小さな額縁に収められた絵で、湖畔に佇む苔の生えた建物が描かれていた。
抜け落ちた屋根と窓、崩れかけた白く光る壁と周りに茂る緑。建物を囲む青い水面のコントラストが、痛いくらいに眩しい。
淡く儚いタッチが、絵全体にどこか懐かしい雰囲気を持たせていた。
すると突然、鼻の奥がツンとして、喉の奥が締まる。あれこの感覚はと思った刹那、頬に熱いものが流れた。
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