47人が本棚に入れています
本棚に追加
不思議に思いながらページをめくると、先の絵と同じ雰囲気のものが何枚も掲載されていた。どうやら「古川茂」の絵を集めた図録らしい。
「曽木発電所は、鹿児島県の伊佐市にある昔の建物です」
「鹿児島」
「ええ。今はダム湖の底に沈んでいますが、水位が下がる夏にはこの絵のように現れるんです。古川茂は伊佐市の絵で有名なんですよ。伊佐市出身だからでしょうかね」
恵は本から目が離せずに、胸に迫りくる何かに必死に涙をこらえていた。今まで感じたことのない感情に戸惑いを隠せない。
懐かしい、という感覚に近いけれどそうではない。もっと心に訴えかけてくるような、激しく、必死で、とても強い力に引っ張られるような感覚だった。
最初のコメントを投稿しよう!