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いよいよ我慢が出来なくなって、騒がしい駅前から逃れるように、薄暗い路地に入った。
点滅する街灯の光だけが頼りの路地に、パンプスの音がカツカツと響く。コンクリートに落ちた自分の影は、3年着ているこのスーツよりもくたびれていた。
真夏の夜の息苦しい風が、恵の横を吹き抜ける。汗ばむ頬に張り付いた髪をかき上げ、のっそりと顔を上げて前を向いた。
それと同時に、薄暗い路地の中で控えめな光を発する照明と、それに照らされた手作りの看板が視界に入る。
隠れ家のようにひっそりと佇む建物で、壁と同系色のクリーム色の扉には、西洋の建物にありそうな細かい彫刻が施されていた。木製の看板に、英語の発音ではなさそうな難しい外国語の店名と『ギャラリーバー』と書かれていた。
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