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「うるせ~な。」
「あはは、照れるな照れるな。」
戸中居さんはサンタの肩をポンポンと叩く。
「私はちょっと外出するから、凛ちゃんごゆっくり~。」
そう言って戸中居さんは外に出て行った。
そして前に来た時と同じ、テーブルとソファーしかない部屋に入った。
「で、何の話だったっけ?」
サンタはソファーにどかっと座る。
「ねぇ、何であんなにたくさん仕事してるの?」
私もサンタの向かい側に座った。
「何でって・・金稼ぎの為だよ。」
「金稼ぎ?」
「あぁ、12月に向けて稼がなきゃいけないからな・・・俺ってサンタだから。」
「サンタって・・?」
私にはサンタが何を言ってるのか分からなかった。
「サンタって言ったらサンタクロースだろ。知らない?」
「サンタクロースは知ってるけど・・・えぇ!?」
サンタの話を聞けば聞くほど、私は混乱していく。
「・・・全部話してやるよ。まず、俺と戸中居はサンタクロースとトナカイだ。OK?」
私はとりあえず頷く。
「今はさ、12月のクリスマスにプレゼントを配る相手を見極めてるところなんだ。まぁこれはトナカイの仕事なんだけどな。」
「それとサンタの仕事三昧に何の関係が?」
「プレゼント代だよ。俺の仕事三昧はその資金集め。トナカイの魔法でお金をプレゼントに変換して配るんだ。」
サンタは優しい顔つきで話す。
「あ・・・。」
私は言葉を飲み込んだ。
聞きたい事はまだまだある。
だけど・・・ひとつだけ分かった。
『サンタとさよならしなければならない日が来る』
戸中居さんの仕事が終わったら、きっとサンタはいなくなるだろう。
「ねぇ、何でそんな大事な話・・・私にしてくれたの?」
サンタは真っ直ぐ私の目を見て少し悲しげな表情で笑みを浮かべた。
「記憶をさ・・・消すんだ。」
「えっ?」
「次の街に行くときに、俺とトナカイに関する記憶を全部消す決まりがあるんだ。俺たちの存在が公にならないようにさ・・。」
「そんなのって・・。」
私は思わず立ち上がる。
「トナカイの魔法でお前は俺たちの事、全部忘れる。それで・・さよならだ。」
「サンタクロースだから?存在がバレちゃいけないから?冗談じゃない!そんなのさよならの理由にならない!」
私は感情が爆発して、部屋を飛び出した。
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