さよならの時

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記憶を消すなんて・・・ サンタの事、忘れるなんて・・・ 「わっ。」 勢いよく外に出ると、ちょうど帰ってきた戸中居さんとぶつかってしまった。 「ご、ごめんなさい。」 私は涙を流しながら謝った。 「凛ちゃん、どうした!?はっ、まさかアイツが凛ちゃんに・・・。」 泣きながら家を飛び出してきた私を見て、戸中居さんはサンタに何かされたんじゃないかと勘違いした。 「あ、あの・・何でもないですから。」 殺気立って家に入ろうとする戸中居さんを、私は慌てて止める。 「そう?」 戸中居さんは止まって私の方を見る。 「じゃあおやすみなさい。」 私は引きつった顔で笑い、走って自分の家に帰った。 そして私は次の日も、その次の日も変わらない毎日を過ごす。 何も考えないようにして・・ あの夜から1週間が過ぎた頃、私の家に戸中居さんがやってきた。とりあえず部屋に上がってもらう。 「突然ごめんね~。話がしたくて来ちゃった。」 「いえ・・それで話っていうのは?」 私は戸中居さんをじぃっと見る。 「話は聞いたよ。あの三田(バカ)、全部話しちゃったんだって?私らの秘密・・。」 戸中居さんは威圧的なオーラを出し、笑顔で話す。 「・・・魔法で記憶を消すって、本当ですか?」 「うん、本当だよ。決まりだからさ。」 やっぱり・・私は泣きそうになるがグッと我慢する。 「ふふ、アイツも何で話しちゃったんだろうね。今までそんな事なかったのに。」 戸中居さんは笑いながら、一枚の紙を取り出した。 「記憶は消しちゃうけど、この紙に欲しいプレゼントを書くと、クリスマスにサンタが届けに来るよ。受け取って。」 戸中居さんから紙を受け取る。 「私の仕事ももうすぐ終わるんだ。9月になったら次の街に行くよ。」 「9月ってあと2週間しか・・。」 そんなに早く別れが来るんだ。 「サンタの奴あの夜からずっとテンション低くてさ、たまには会ってあげてよ。じゃ、私は帰るね。」 戸中居さんは手を振りながら帰って行った。 私は渡された紙を見る。 「欲しいものかぁ・・・。」 1週間が経ち、私は決意した。 「サンタ、今から仕事(バイト)?いってらっしゃい。」 私は笑顔でサンタに声をかけた。 「え・・おぅ。」 突然声をかけられ、サンタは驚いたようだ。
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