赤にかけられた青の呪い

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**** 「これ……」  絵美は赤い石のネックレスと僕を交互に見ながら、戸惑った表情を浮かべる。 「ずっと、言ってなかったけどさ」  彼女――赤井絵美に青の呪いを掛けてしまったのが僕――青山雄一ならば、その呪いを解けるのも、たぶん僕しかいない。 「僕の好きな色は、赤だよ。小さいときから、今も、ずっと」  絵美がポカンとした表情になる。その表情は彼女の母親にとてもよく似ていて、こんなときなのに僕はそれがおかしかった。 「なんで笑うのよ」  そう言いながらも、絵美の顔にも笑顔が浮かんだ。 「いや別に」  もし絵美の母親から聞いたことを話したら、今夜また取っ組み合いのケンカになるかもしれない。  絵美はそっとネックレスのガーネットに指先を触れる。 「綺麗だね」  全身を青で包む。それは不器用な彼女なりの僕への告白だったのか、ただの意地だったのかは分からないけれど。 「ね、着けてよ」  絵美は着けていた青い石のネックレスを外すと、僕にそう言った。 「僕が?」 「いいから、早く」  仕方なく絵美の隣の席に移り、ネックレスを首に回す。いつもより近いその距離と、無防備にさらされた首筋に、心臓が変な音を立てた。  ネックレスの金具はひどく華奢で、僕の指ではなかなかうまく扱えない。 「まだー?」 「ちょっと待ってって」  焦りと緊張、それに人目も気になって、今の僕の指は絵美以上に不器用だ。  悪戦苦闘の結果、何とか金具を留めることに成功する。 「ありがと」  絵美はそう言って振り向くとにこりと笑った。  青に包まれた絵美の胸元で輝く、僕からの赤。  青にだって、ずっと、赤の呪いが掛かっていたんだ。 【 完 】
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