赤にかけられた青の呪い

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赤にかけられた青の呪い

 彼女は青が好きだ。  いや、好きという言葉では生ぬるい。  青に呪われている。  その方がずっと正確だ。  そして、その呪いを掛けてしまったのは――この僕だ。  「お待たせ」  そう言って待ち合わせたカフェに現れた彼女は青ずくめだった。  淡いパステルブルーのブラウスに鮮やかなコバルトブルーのカーディガン、紺色のスカートにブルーグレーのパンプス、肩に掛けたバッグ――本体は薄い水色で取っ手と飾りのリボンはネイビーだ。ピアスもネックレスも、青いものを身に付けている。  緩くパーマを掛けた茶色い髪――高校生のときに髪を青くすると言った彼女を、母親は取っ組み合いのケンカをして止めたらしい――も深い青のシュシュで、サイドにまとめていた。  彼女はセンスがいい。 だからこんなにも青ずくめなのに、うまくまとまっている。ぱっと見て彼女が青ずくめだと気付けるのは、きっと僕と彼女の両親だけだ。  それでも彼女にはたった一つ、ぬぐい去れない違和感がある。  それは、彼女の名字が赤井(あかい)だということ。
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