赤にかけられた青の呪い

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 絵美が青に「呪われた」のは小学生のとき。きっかけなんて他愛もないことだった。  それは、よくある「何色が好き?」という質問。  絵美は、友達にそう聞かれて、 「私は、青が好き」  と、答えていた。確かにその日、彼女の長い髪を束ねていたのは青色の髪ゴムだった。  僕は、そのとき絵美の隣の席で、その会話を聞くともなしに聞いていた。  そして、絵美が「青が好き」と言ったとき、 「え、赤井なのに?」  と、思ったままのことを口にしていた。  それは特段大きな声ではなかったのに、騒々しい教室に現れた一瞬の沈黙にバチリとはまってしまった。  そして、クラス中が「赤井なのに青が好き」ということの面白さに気付いた。教室は大爆笑に包まれた。  それから絵美は、ことあるごとに「何色が好き?」と聞かれることになる。  ある日、絵美はピンクの筆箱を青に変えた。目ざとい男子がそれに気付いてからかった。しかし、その筆箱を開けると、鉛筆もシャーペンも消しゴムも定規も全て青で統一されていた。  それを見た教室の生徒たちは、絵美の静かな怒りと底知れぬ何かを見たような気がして、以来絵美がからかわれることは無くなった。  それでも、あの日以来、絵美を包む青が消えることは無かった。
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